求人票を出しても応募が来ない会社が、最初に見直すべきこと

求人票を出しているのに、なかなか応募が来ない。
ハローワークにも出しているし、求人サイトにも掲載している。
条件も決して悪くないはず。
それなのに、思うような人材から応募が来ない。

中小企業の採用に関する、このような相談を受けることは珍しくありません。
応募が来ないと、まず考えがちなのは「給与が低いのだろうか」「休日数が少ないのだろうか」といった条件面の問題です。
もちろん、給与や休日などの条件は大切です。
求職者にとって、生活に直結する重要な情報であることは間違いありません。

しかし、中小企業の求人票を見ていると、応募が来ない理由は条件だけではないと感じることがあります。
むしろ、会社の魅力や仕事内容、入社後の働き方が、求職者に十分伝わっていないケースが少なくありません。

求職者から見ると、求人票は「この会社で働く自分を想像できるか」を判断するための入口です。
だからこそ、求人票を出しても応募が来ないときは、まず「条件を上げるかどうか」だけでなく、「求職者から見て、働くイメージが持てる求人票になっているか」を見直す必要があります。
求人票は、単に募集条件を並べるためのものではないのです。

求人票が「仕事内容の羅列」になっていないか

求人票でよく見かけるのが、仕事内容が大まかに書かれているだけのパターンです。
たとえば、次のような表現です。
「事務作業全般」
「営業補助」
「現場作業」
「接客業務」
「経理・総務業務」
会社側からすると、これで十分伝わっているように感じるかもしれません。
実際に社内で働いている人からすれば、「事務作業全般」と聞けば、どのような業務をするのか何となくイメージできるでしょう。

しかし、求職者は社内の事情を知りません。
「事務作業全般」と書かれていても、電話対応が多いのか、データ入力が中心なのか、来客対応があるのか、請求書作成まで任されるのか、まったく分かりません。
「営業補助」と書かれていても、資料作成が中心なのか、顧客対応もあるのか、営業同行があるのか、数字の責任があるのか、判断できません。

このように仕事内容が見えない求人票は、求職者にとって不安が大きい求人票です。
特に転職活動をしている人は、前職での不満や失敗を抱えていることもあるでしょう。
「入社してみたら思っていた仕事と違った」
「聞いていた話と違った」
「何でもやらされる職場だった」
このような経験がある人ほど、曖昧な求人票には慎重になります。

そのため、求人票では単に業務名を並べるのではなく、実際にどのような仕事をどのくらいのペースで行うのかをできるだけ具体的に伝えることが大切です。
たとえば、「事務作業全般」と書くよりも、
「電話・来客対応、請求書の作成、会計ソフトへの入力、備品管理などを担当していただきます。入社後は、まず請求書作成とデータ入力から覚えていただき、慣れてきた段階で電話対応や来客対応もお任せします。」
と書かれていた方が、求職者は入社後の働き方をイメージしやすくなります。

仕事内容が具体的になるだけで、「自分にできそうか」「これまでの経験を活かせそうか」「未経験でも挑戦できそうか」を判断しやすくなります。

「アットホーム」「やりがい」だけでは伝わらない

会社の雰囲気や魅力を求人票に書くことも大切です。
よく使われる表現に、
「アットホームな職場です」
「やりがいのある仕事です」
「風通しの良い会社です」
「未経験でも安心です」
「丁寧に指導します」
といったものがあり、求人サイトなどで目にされたり、自社の求人票に書かれたりすることもあると思います。
これらの言葉自体が悪いわけではありません。
実際に人間関係が良く働きやすい会社もあるでしょうし、仕事にやりがいがあり、未経験者を丁寧に育てている会社もあるはずです。

問題は、その言葉だけでは求職者に具体的なイメージが伝わりにくいことです。
たとえば、「アットホームな職場」と書かれていても、求職者からすると実際にはどのような雰囲気なのか分かりません。
少人数で相談しやすい職場なのか。
社員同士の距離が近い職場なのか。
社長と直接話す機会が多い職場なのか。
逆に、プライベートにも踏み込まれるような距離感なのか。
人によって受け取り方は違います。

「やりがいのある仕事」も同じです。
お客様から直接感謝されることがやりがいなのか。
専門知識が身につくことがやりがいなのか。
裁量を持って働けることがやりがいなのか。
地域に役立つ実感があることがやりがいなのか。

この辺りを具体化して記載しなければ、求職者には伝わりません。
求人票で大切なのは、きれいな言葉を並べることではなく、会社の実態を求職者が想像できる言葉に変えることなのです。

「アットホームな職場です」と書く代わりに、
「従業員15名の会社で、分からないことがあれば近くの先輩に確認しやすい環境です。朝礼ではその日の予定を共有し、業務が偏らないように声をかけ合っています。」
と書けば、職場の様子が少し見えてきます。

「未経験でも安心です」と書く代わりに、
「入社後1ヶ月は、先輩社員が横について基本業務を説明します。最初から一人で担当を持つのではなく、簡単な入力作業や補助業務から覚えていただきます。」
と書けば、未経験者の不安はかなり減ります。

抽象的な言葉を使う場合は、その言葉の中身を必ず具体化する。
この意識を持つだけでも、求人票の伝わり方は大きく変わります。

求職者は「条件」だけで応募を決めていない


冒頭でも記載したように、求人票を見直すとなった時はまず給与や休日などの条件に目が向きがちです。
もちろん条件は重要です。
同じ仕事内容であれば、給与が高い方が選ばれやすいでしょうし、休日が多い方が魅力的に見える可能性は高いでしょう。

しかし、求職者は条件だけで応募を決めているわけではありません。
特に中小企業の場合、大企業のように知名度や福利厚生で勝負するのは難しいこともあります。

その代わり、求職者が重視するのは、
「どんな人と働くのか」
「入社後に何を任されるのか」
「自分にもできそうか」
「きちんと教えてもらえるのか」
「長く働ける環境なのか」
「会社は従業員を大切にしているのか」
といった部分、つまり求職者は求人票を通じて、会社の姿勢を見ています。

そんな見方をしている人が、次のような求人票を目にしたらどう思うでしょう。
仕事内容が曖昧。
労働条件の説明が不十分。
良いことばかり書いていて、実態が見えない。
どのような人に来てほしいのか分からない。
こうした求人票は、知らず知らずのうちに求職者に不安を与え、結果的にスルーされることにつながります。

一方で、給与が特別高くなくても、仕事内容や職場の雰囲気、教育体制、求める人物像が具体的に書かれている求人票は、求職者に安心感を与えます。
「この会社は、自分たちの仕事をきちんと言葉にしている」
「入社後のことまで考えてくれていそうだ」
「合う人・合わない人を正直に伝えようとしている」
そのように感じてもらえれば、応募につながる可能性は高まります。

「誰でも歓迎」は、かえって伝わりにくい

人手不足の中では、できるだけ多くの人に応募してほしいと考えるのは自然なことです。
そのため、求人票でも、
「未経験歓迎」
「年齢不問」
「どなたでも応募可能」
「やる気のある方歓迎」
といった表現を使いたくなることがあります。

もちろん、間口を広げること自体は悪いことではありません。
しかし、あまりにも対象が広すぎると、求職者から見て「自分に向いている求人なのか」が分かりにくくなります。
求人票では、「誰でもよい」と見えるよりも、「こういう人に合う仕事です」と示した方が、むしろ応募しやすくなることがあります。

たとえば、
「一人で黙々と作業するよりも、周囲と声をかけ合いながら仕事を進めることが得意な方に向いています。」
「最初は覚えることが多い仕事ですが、決められた手順を一つずつ確認しながら進められる方であれば、未経験でも取り組みやすい仕事です。」
「お客様と接する機会が多いため、専門知識よりも、相手の話を丁寧に聞く姿勢を大切にしています。」

このように書くと、求職者は自分に合うかどうかを判断しやすくなります。
また、会社側にとっても、入社後のミスマッチを減らすことにつながります。

採用活動では、応募数を増やすことも大切です。
しかし、応募数だけを追いかけて、会社に合わない人を採用してしまえば、結果として早期退職につながることもあります。
特に一人が組織に影響するウェートが大きい中小企業の採用では、「多くの人に応募してもらうこと」と同じくらい、「合う人に応募してもらうこと」が重要です。

見直すべき3つのポイント

これまで書いてきたことを踏まえて、求人票を出しても応募が来ない場合、まずは次の3つを確認してみてください。

1つ目は、仕事内容が具体的に書かれているかです。
業務名だけでなく、実際に何をするのか、どの順番で覚えるのか、どのような人と関わるのかまで書けているかを確認します。

2つ目は、会社の魅力が抽象的な言葉で終わっていないかです。
「アットホーム」「やりがい」「未経験でも安心」といった表現を使う場合は、その中身を具体的に説明できているかを見直します。

3つ目は、求める人物像が明確になっているかです。
「やる気のある方」だけではなく、どのような働き方ができる人に合う仕事なのかを言葉にします。

まずはこの3つを見直すだけでも、求人票はかなり変わります。
そしてさらに踏み込むなら、求人票だけでなく、入社後の受け入れ体制や職場ルールもあわせて確認する必要があります。

応募を増やすための求人票であっても、最終的には採用後の定着につながらなければ意味がないからです。

求人票は、会社と求職者の最初の約束のようなものです。
そこに書かれている内容が実態と合っていれば、入社後の安心感につながります。
反対に、求人票と実態がズレていれば、不信感や早期退職につながることもあります。

求人票を出しても応募が来ない、応募はあるものの求める人材とちょっと違う、採用後に定着してくれないと感じている場合は、まずは現在の求人票や採用状況を整理するところから始めましょう。

単に表現を少し変えるだけでなく、会社の働き方や受け入れ体制まで含めて見直す機会と捉えることが大切です。

サムライ社会保険労務士事務所では、求人票の作成・添削だけでなく、採用後の定着や職場ルールの整備まで含めて、中小企業の採用と労務管理を支援しています。何から手を付けたら良いかわからない、手直ししてみたがいまいちピンとこない、といった時は下記お問い合わせフォームから是非ご相談ください。

※この記事はnoteにも掲載しています。

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