「良い人がいない」はなぜ起こる? 人手不足の正体と、採用で見直すべきこと
「人手不足で、なかなか採用できない」
最近では、業種を問わずこうした声を聞くことが多くなりました。
実際、日本では少子高齢化が進み、働き手となる人口そのものが減少していく中で、当面の間、人手不足が企業経営にとって大きな課題であり続けることは間違いありません。
ただ、ここで一度立ち止まって考えてみたいことがあります。
そもそも「人手不足」とは、どのような状態なのでしょうか。
単純に考えれば、「働いてくれる人が足りない状態」ということになるでしょう。
しかし、もう少し実態に即した形で人手不足を見つめ直すと、
「必要な場所に、必要としている人がいない状態が継続していること」
と捉えることができ、より実感を持って把握出来ることと思います。
会社であれ、役所であれ、医療機関であれ、人を必要としている現場は無数に存在しますが、それらの現場にとって必要な人がいない状態が継続することで、人手が足りないという感覚が生じるのは、身をもって経験している方も多いのではないでしょうか。
とはいえ、人数が足りてさえいれば良いという訳でもありません。
企業が欲しい一人は、当然「誰でもいい」一人ではない
たとえば、従業員10人の会社で一人が退職したとします。
10人のうちの一人なので、会社への影響は小さくありません。
そこで求人を出して、新しい人を一人採用しようとすると思います。
欠員の補充は採用の場面において最も起こりうる事態といえますが、どんな人でも良いかと言えば、恐らくそうではないはずです。
能力の高い人がいい。
仕事には真面目に取り組んでほしい。
周囲と協調して働けて、コミュニケーション能力もある程度あってほしい。
さらに言えば、使える人件費には限界があるので、経営者の側から少しストレートな表現をすると、
「できるだけ安い給料でも頑張ってくれる人」
が来てくれれば、非常にありがたいでしょう。
もちろん、これは経営者を批判するための話ではありません。
限られた人件費の中で事業を運営する以上、高くない給料で出来るだけ会社に合った仕事のできる人を採用したいと考えるのは自然なことです。
このように、企業が求める人材の最大公約数的な条件は上記のようなものになるように思われ、この記事ではこうした条件のうち一つ、あるいはいくつかを満たし、その会社が採用したいと考える人を、便宜上「適切な人」と呼ぶことにします。
(ここでいう「適切な人」とは、会社にとって都合のいい人、という意味ではありません。あくまで「その会社が採用したいと考えている条件を数多く満たす人」という意味です)
そして、人手不足について考えるうえで重要なのは、この「適切な人」がどこにいるのかということになるのです。
自社が欲しい人は、他の会社も欲しい
能力が高い。
仕事に真面目に取り組む。
周囲とコミュニケーションも取れて、うまくやっていける。
さらに、会社が提示できる給与水準でも働いてくれる。
こうした人が求人に応募してくれれば、採用する会社としては非常にありがたいと思います。
しかし、ここで少し視点を変えてみましょう。
そのような人は、他の会社から見ても魅力的な人材ではないでしょうか。
自社が「ぜひ採用したい」と思う人は、他社にとっても「ぜひ採用したい人」である可能性が高い。
これは、考えてみれば当たり前のことです。
さらに言えば、そのような人が現在仕事をしていないとは限りません。
むしろ、仕事のできる人や真面目に働く人であれば、すでにどこかの会社に勤め、一定の評価を受けている可能性が高く、現状の会社で仕事内容や待遇、人間関係などに大きな不満がなければ、積極的に転職先を探していないかもしれません。
つまり、
会社にとっての「適切な人」ほど、すでにどこかで働いている可能性がある。
ということで、ここに人手不足の状態での採用の難しさがあります。
「人がいない」のではなく、「自社が欲しい人がいない」
これらを踏まえて改めて人手不足という言葉を考えると、
「世の中に働く人がいなくなった」
という、少子高齢化によって働き手そのものが減少しているという大前提はあるものの、個々の企業の採用という視点で考えれば、
「人がいない」ことと「自社が欲しい条件を満たす人が見つからない」ことは全く別の問題である、という違いがおわかりいただけたことと思います。
たとえば、求人を出して応募があったとしても、
「経験が足りない」
「年齢が希望と違う」
「希望する勤務時間と合わない」
「求めている能力に届かない」
などの理由で採用に至らないことがあります。
この場合、応募者そのものが存在しなかったわけではありません。
会社が求めている条件と、応募してきた人との間に差があったということです。
そう考えると、人手不足は単なる人数の問題ではなく、
「企業が求める人材と、実際の労働市場との間に生じているズレ」
という側面も持っていることが分かります。
みんなが同じような「適切な人」を探せば、当然取り合いになる
ここで仮に、同じ地域に求人を出している会社が10社あるとします。
そして、その10社がどこも、
「経験者が欲しい」
「能力の高い人が欲しい」
「真面目な人が欲しい」
「コミュニケーション能力の高い人が欲しい」
「できれば人件費は抑えたい」
と考えていたら、どうなるでしょうか。
当然、その条件に合う人の取り合いになります。
採用も市場である以上、「適切な人」を欲しがる企業が多く、その条件に一つでも多く当てはまる人が少なければ、競争が激しくなります。
ところが採用する側にいると、この「競争」という感覚が見えにくくなっていることがあります。
特にかつては採用が上手くいった成功体験がある企業が、求人票を出してうまくいっていない時などは、
「良い人が応募してこない」
「最近の若い人に刺さらない」
「以前ならこの条件でも採用できたのに」
などと考えてしまいがちです。
しかし、求職者側から見れば、自社の求人だけを見ているわけではありません。
複数の求人を比較して、
給与はどうか。
休日はどうか。
勤務時間はどうか。
仕事内容は分かりやすいか。
職場の雰囲気はどうか。
自分にもできそうな仕事か。
長く働けそうか。
といったことを考えながら、応募する会社を選びます。
企業が求職者を選んでいるのと同じように、求職者も企業を選んでいるので、企業の側からすると適切な人が現れず人手不足が解消されないとなってしまいがちなのです。
「良い人がいない」で終わらせると、打つ手がなくなる
そして採用がうまくいかないと、
「人手不足だから仕方がない」
「最近は良い人がいない」
と考えてしまうこともあるでしょう。
実際に人が減ってきている現実がある以上、それを言い訳にできるという面も率直に言ってあります。
しかし、そこで思考停止してしまうと、当然のことながら会社としてできることがほとんどなくなります。
世の中の人口を一社の努力で増やすことはできませんし、地域の労働人口を急に増やすこともできないのは言うまでもありません。
一方で、
「自社が本当に求めている人はどのような人なのか」
と考えれば、できることが見えてきます。
経験者でなければ本当に仕事はできないのか。
今は高い能力が無くても、入社後に教育することはできないのか。
必要としている資格は、本当に入社時点で必要なのか。
勤務時間を少し変えることで、応募できる人はいないか。
高いコミュニケーション能力は、本当にその仕事に必要なのか。
求人票には、その仕事の魅力が求職者に伝わるように書かれているか。
一つずつ考えていけば、「絶対に必要な条件」と「できれば満たしてほしい条件」が混ざっていることに気づくことがあります。
これは、採用基準を無条件に下げるという話ではありません。
自社が本当に必要としている人材像を整理し、不必要に採用対象を狭くしていないかを確認するということです。
最後に
冒頭でも記載したとおり、
人手不足とは「必要な場所に、必要としている人がいない状態が継続していること」
なので、必要としている場所に適切な人を増やそうとするのは、当然の行動と言えると思います。
そして、自社が採用したいと思う適切な人は、他の会社から見ても魅力的な人材であるケースが多く、そのような人はすでに別の会社で働いている可能性も高い言わざるを得ません。
だからこそ、その数少ない人材の採用につなげていくには、
「良い人がいない」
で終わらせるのではなく、
「自社にとって本当に必要な人とは、どのような人なのか」
「その条件はすべて本当に必要なのか」
「その人から見て、自社を選ぶ理由はあるのか」
というところまで自社が必要としている人材のペルソナを整理し、その人に選ばれるためには何を変える必要があるのかを考えることが必要です。
そうすることで初めて、「他社と競合しない一人」と出会う道が開けると思うのですが、要件を整理するのが難しい、第三者の視点が欲しいといったご要望がありましたら、一度下記お問い合わせフォームからご相談ください。ヒアリングを通じて一緒に探らせていただきます。
※この記事はnoteにも掲載しています。
