採用後に「聞いていた話と違う」と言われないために

採用後に、従業員から「聞いていた話と違う」と言われたことはないでしょうか。

会社側としては、決して嘘をついたつもりはないし、求人票にも必要なことは書いている。

書面では足りないと思われる部分は面接でも説明したつもりだった。

それでも入社後しばらくしてから、従業員の側に不満がたまり、「思っていた仕事と違った」「面接で聞いていた話と違った」と受け止められてしまうことがあります。

良くないことではありますが、このようなズレは中小企業の採用において決して珍しいものではありません。

特に従業員10〜30人規模の会社では、社長や現場責任者が採用を担当しながら、日々の業務も同時に抱えていることが多いと思います。

そのため、求人票の内容、面接での説明、入社後の教育、実際の職場ルールが、細かく整理されないまま採用が進んでしまうことがあります。

その結果、会社としては「そんなつもりではなかった」のに、従業員から見ると「聞いていた話と違う」と感じられてしまうということが起こるのです。

このような採用後のミスマッチを防ぐためには、どうすれば良いのか。

今回は、求人票で伝えた内容、面接で説明した内容、雇用契約書に書いた内容、就業規則や社内ルールとして運用している内容ができるだけ一致していることが大切であるということについてまとめていきます。

求人票に良いことだけを書くと、ミスマッチを生む

求職者との最初の接点となる求人票では、できるだけ会社をよく見せたいと考えるのが自然です。

応募を増やしたい。

他社より魅力的に見せたい。

少しでも多くの人に興味を持ってほしい。

そのため、どうしても良い面を中心に書きたくなります。

しかし、良いことだけを書いた求人票は、入社後のミスマッチにつながりかねない、というのはこれまでにも書いてきたとおりです。

改めて具体的に言えば、「未経験歓迎」と書く場合でも、その仕事に大変な面があるなら、ある程度は正直に伝えた方が良い、ということになります。

最初に覚えることが多い。

繁忙期は忙しくなる。

お客様対応で臨機応変な判断が必要になる。

少人数のため、担当業務の幅が広い。

こうした情報は、一見するとマイナスに見えるかもしれません。

しかし、求職者にとっては「自分に合う仕事かどうか」を判断するための大切な情報です。

会社に合わない人まで応募してもらうよりも、仕事の特徴を理解したうえで「それなら自分に合いそうだ」と思う人に応募してもらう方が、採用後の定着につながりやすくなるのは言うまでもありません。

もちろん、だからと言って必要以上に厳しく見せる必要はありません。

大切なのは、良い面と大変な面を、実態に合わせて誠実に伝えることです。

「最初は覚えることが多いですが、入社後1ヶ月は先輩社員が横について基本業務を繰り返し説明します」

「月末は請求処理で忙しくなりますが、通常期は落ち着いて業務を覚えられます」

「お客様対応で判断が必要になりますが、各種トークスクリプトがあります」

「少人数のため幅広い業務に関わりますが、その分、仕事全体の流れを理解しやすい環境です」

このように書けば、求職者は入社後の働き方を具体的に想像しやすくなります。

応募してもらえない時間が長くなったりすると、どうしても採用が目的になってしまう部分がありますが、もちろん採用して終わりではありません。

採用した人に長く働いてもらうためには、求人票で伝えた内容と、入社後の実態ができるだけ一致していることが大切です。

求人票の見直しは、会社の働き方を見直すことでもある

「求人票を改善する」となると、文言をどうするかということに目が行きがちですが、本当に大切なのは求人票を書く「前」の整理ということになります。

どのような仕事を任せるのか。

どのような人に来てほしいのか。

入社後、どのように仕事を教えるのか。

評価や昇給はどのように考えているのか。

残業や休日、休暇のルールはどうなっているのか。

会社として、どのような働き方を大切にしているのか。

これらが曖昧なままでは、求人票に書く内容も当然曖昧になりますし、この部分を整えないまま採用を進めると、仮に応募が来たとしても、採用後に「聞いていた話と違う」「思っていた職場と違った」という不満につながる可能性がかなり強まります。

逆に言えばこれらが整理できていると、求人票に書くべき内容も自然と見えてくるということになりますし、その内容を見て応募してきてくれた方は、実態に即したイメージを持って入社されるので、長く働いてくれるということも大いにあり得るのです。

面接での説明も、会社全体でそろえる必要がある

ここまで求人票について主に取り上げてきましたが、この部分を整えても、面接での説明が曖昧だと、やはりミスマッチは起こります。

特に中小企業では、面接を社長が行うこともあれば、現場責任者が行うこともあります。

その際、説明する人によって話す内容が違うと、応募者は混乱します。

社長は「残業は少ない」と説明した。

現場責任者は「忙しいときは結構残業がある」と説明した。

求人票には「丁寧に指導」と書いてあるが、面接では教育体制について詳しく説明されなかった。

このようなズレがあると、応募者は不安を感じます。

また、入社後に実態と違っていた場合、「面接ではこう聞いていた」という不満につながります。

面接は応募者の人柄や経験を見るというのを中心に考えがちですが、会社側も正確な情報を伝えるという意識が必要で、そのためには面接で説明する項目をあらかじめ整理しておくことが大切です。

仕事内容。

勤務時間。

残業の有無や繁忙期。

休日・休暇の取り方。

入社後の教育体制。

評価や昇給の考え方。

試用期間中に見るポイント。

職場で大切にしているルール。

少なくともこれらについては、会社側の説明が人によって大きく変わらないようにしておく必要があります。

面接で何となく話すのではなく、求人票に書いた内容と矛盾がないかを確認しながら説明する。

これだけでも、入社後の「聞いていた話と違う」を減らすことにつながります。

求人票・面接・契約書・就業規則の内容はつながっている

一般的な採用活動な流れとして、求人票を出し、応募者と面接をし、採用が決まれば雇用契約書や労働条件通知書を交付し、その後は会社の就業規則や社内ルールに沿って働いてもらうことになります。

これらは別々の書類や場面に見えますが、実際にはすべてつながっています。

求人票で伝えた仕事内容と、面接で説明した仕事内容が違う。

面接で話した勤務時間と、雇用契約書に書かれている勤務時間が違う。

雇用契約書には書かれているが、就業規則や実際の運用では違う扱いになっている。

社長の頭の中にはルールがあるが、従業員には明文化されていない。

このような状態だと、入社後にトラブルが起きやすくなります。

たとえば、有給休暇の取り方について、社長は「事前に言ってくれれば取ってもらってよい」と考えていたとします。

しかし、社内で申請方法や連絡のルールが明確にされていなければ、従業員は「いつ、誰に、どのように言えばよいのか」が分かりません。さらに、部署や上司によって対応が違えば、不公平感にもつながります。

残業についても同じです。

「必要なときは残業してもらうことがある」という認識が会社側にあっても、残業を命じる手続きや、どの程度発生する可能性があるのか、残業代の扱いが曖昧だと、従業員は不安を感じます。

求人票だけを見ると小さな表現の問題に見えても、実際には会社のルールや働き方の整理不足が原因になっていることがあります。

だからこそ、求人票を見直すときは、単に文章を整えるだけではなく、その後ろにある労働条件や社内ルールまで確認することが大切になるのです。

「聞いていた話と違う」は、採用直後に噴出する

本来入社直後というのは「本当にやっていけるだろうか」という不安はありつつ、自分の力をしっかり使いたいという意欲にあふれているものです。

それなのに多くの場合において「聞いていた話と違う」という不満は、入社直後に表面化します。

求人票に書かれていた手当が、いざ入社すると条件に合わずに払われない……といった直接的なことがあれば話はわかりやすいですが、そのような不満が生じる主な原因は、求人票に書かれた内容や面接で説明と、実際の運用との間に「少しずつ」ズレが生まれていることにあります。

たとえば、求人票に「残業は少なめ」と書いていたり、面接で「うちは残業がほとんどないから」と言ったりしていたとします。

会社側としては、毎日遅くまで残業があるわけではないので、「少なめ」と表現したのかもしれません。しかし、求職者からすると、「ほとんど残業がない職場」と受け取る可能性があります。

実際には、通常期はほとんど残業がなくても、月末や繁忙期には当然のように残業が発生する。

このような場合、求人票や面接でその説明が不足していると、入社後に「残業は少ないと聞いていたのに」と不満につながることがあります。

他にも、次のようなケースがあります。

「未経験でも丁寧に教えます」と書いていたが、実際には教育担当が決まっていない。

「昇給あり」と書いていたが、昇給の時期や基準が明確ではない。

「風通しの良い職場」と説明していたが、実際には報告や相談のルールが曖昧。

「完全週休2日制」と「週休2日制」の違いを会社側が十分に意識していなかった。

「試用期間あり」と書いていたが、試用期間中の条件や評価基準がきちんと説明されていない。

こうした一つひとつは、会社側からすると小さな説明不足に見えるかもしれません。

しかし、入社した従業員にとっては、生活や働き方に直結する重要な問題です。

特に転職してきた人は、「前の職場で合わなかった部分を避けたい」「次は長く働ける会社を選びたい」と考えていることも多いです。そのような人にとって、入社後に認識違いが続くと、会社への信頼が大きく下がってしまいます。

就業規則や社内ルールが曖昧だと、不満がたまりやすい

入社後の不満は、仕事内容や給与だけから生まれるわけではありません。

むしろ、日々の小さなルールの曖昧さから生まれることも多いです。

たとえば、次のような場面。

遅刻や欠勤の連絡は誰にするのか。

有給休暇はどのように申請するのか。

残業は誰が指示するのか。

休憩時間の取り方はどうなっているのか。

試用期間中に何を見ているのか。

ハラスメントの相談先はどこなのか。

副業や兼業は認めているのか。

退職時にはどのような手続きが必要なのか。

こうしたルールが曖昧なままだと、従業員は不安を感じます。

また、人によって対応が変わると、「自分だけ不利に扱われているのではないか」「あの人は認められているのに、なぜ自分は駄目なのか」といった不公平感にもつながります。

従業員が少ないうちは、社長がその都度判断することで何とか回るかもしれません。

しかし、従業員が10人、20人と増えてくると、口頭のルールやその場その場の判断だけでは限界が出てきます。

採用を増やしたい会社ほど、入社後のルール、特に就業規則という形で整えておくことが重要です。

就業規則は、会社を縛る面もありますが、そのためだけのものではありません。

従業員に対して「この会社では、このようなルールで働いてもらいます」と示すための基準でもあります。

基準があるからこそ、何か起きてもその基準に則って判断でき、採用時に伝える内容ともブレがなくなるため、従業員も安心して働きやすくなります。

「聞いていた話と違う」を防ぐために確認したいこと

ミスマッチが起こりやすい採用直後について取り上げてきましたが、そのような事態になるのを防ぐためには、まず次の点を確認してみることをおすすめします。

1つ目は、求人票の仕事内容と、実際に任せる仕事が一致しているかです。

求人票で必要以上に見栄えが良くなっていないか。

実際には幅広い業務を任せるのに、その説明が抜けていないか。

入社後すぐに任せる仕事と、慣れてから任せる仕事を分けて説明できているか。

このあたりは大至急確認する必要があります。

2つ目は、労働条件の説明が具体的かどうかです。

勤務時間、休日、残業、試用期間、賃金、昇給、賞与などについて、曖昧な表現になっていないか。

求人票、面接、雇用契約書の内容がズレていないか。

求職者が誤解しやすい表現になっていないか。

当然これらも重要です。

3つ目は、入社後の教育体制が説明できるかどうかです。

誰が教えるのか。

どの順番で仕事を覚えてもらうのか。

最初の1ヶ月、3ヶ月でどこまでできるようになってほしいのか。

困ったときに誰に相談すればよいのか。

「丁寧に教えます」と書くだけではなく、その中身を具体的にしておく必要があります。

4つ目は、社内ルールが明文化されているかどうかです。

休み方、残業、服務ルール、ハラスメント対応、退職時の手続きなど、働くうえでの基本的なルールが整っているかを確認します。

特に従業員が10人前後になっている会社や、これから採用を増やしたい会社では、就業規則や社内ルールを出来るだけ早く整備する方がよいでしょう。

採用は、入社前と入社後をつなげて考える

採用活動というと、どうしても「応募を集めること」「面接をすること」「採用を決めること」に意識が向きがちです。

しかし、中小企業にとって本当に大切なのは、採用した人が会社に合い、長く働いてくれることです。

応募が増えて採用できても、その人が入社後にすぐ辞めてしまえば、採用活動はまた最初からやり直しになりますし、その分コストが膨らみます。

またせっかく面接で良い人と巡り会えても、仕事内容や職場ルールの認識がズレていれば、定着しないどころか、既にいる従業員の負担になる可能性も高いです。

だからこそ、採用は入社前と入社後を分けて考えるべきではありません。

求人票で何を伝えるのか。

面接で何を説明するのか。

雇用契約書や労働条件通知書で何を明示するのか。

就業規則や社内ルールでどのように運用するのか。

これらをつなげて考えることで、「聞いていた話と違う」という不満を減らしやすくなります。

求人票は、会社と求職者の最初の接点であり、採用後の働き方につながる最初の約束でもあります。

そして、面接はお互いにとって現実を結びつける貴重な時間です。

その内容が実態と合っていれば、入社後の安心感につながりますし、反対に実態がズレていれば、不信感や早期退職につながることもあります。

ここまで読み進めていただいた方ならおわかりかと思いますが、採用後に「聞いていた話と違う」と言われないためには、求人票を整えるだけでなく、面接での説明、労働条件の明示、就業規則や社内ルールまで含めて見直すことが大切です。

まずは現在の求人票や面接での説明、社内ルールの状況を整理するところから始めてみてください。

もし専門家の目が必要ということでしたら、サムライ社会保険労務士事務所では、求人票の作成・添削だけでなく、採用後の定着や職場ルールの整備まで含めて、中小企業の採用と労務管理を支援していますので、お気軽に下記お問い合わせフォームからご相談ください。

※この記事はnoteにも掲載しています。

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